営業の成果が担当者ごとにばらつき、育成もうまく回らない。原因の多くは、成果がエースに依存する属人化にあります。強い営業組織とは、誰が担当しても成果を再現できる仕組みを持つ組織です。本記事では、その作り方を5ステップで示し、運用を続けるマネジメントと事業フェーズ別の進め方まで解説します。
強い営業組織とは|共通する特徴
強い営業組織を支えるのが、次の6要素です。仕組みの土台となる基盤3要素と、組織を機能させるマネジメント要素3つに分かれます。
基盤となる3要素は下記のとおりです。
- 型による再現性
- 活動と数値の可視化
- データで改善を回すマネジメント
組織を機能させるマネジメント要素は下記の3つです。
- ビジョンとロードマップの提示
- 戦略に基づく推進
- 関係性と規律の両立
基盤づくりの発想は、工程ごとに専任を置く分業体制にあります。商談プロセスを分け、各領域をプロセスを軸に担当することで、再現性が高まります。
属人化の実態は、当社の調査にも表れています。
当社の調べでは、来店型店舗の営業・販売の現場に、接客品質へ影響する要素を聞きました(複数回答)。最多は「経験年数による接客レベルの差」の46.6%でした。
※当社調べ。来店型店舗における営業・販売業務に従事する1,008名へのインターネット調査(2026年2月実施)
指導やフィードバックの根拠(複数回答)でも、「上司・店長の主観的判断」が41.5%で最も多くなっています。経験と勘に頼る状態から抜け出すことが、強い組織づくりの出発点です。
※当社調べ。来店型店舗における営業・販売業務に従事する1,008名へのインターネット調査(2026年2月実施)
営業組織を作る目的と組織化しないと起きる課題
営業組織を作る目的は、成果を安定して再現できる状態をつくることです。組織化しないと、次の3つの問題が起こります。
- 成果が特定のエースに偏る
- 案件の進捗が見えず検証できない
- 育成の基準がなく指導が場当たりになる
これらは個人の努力だけでは解消しにくい問題です。
当社の調べでは、インサイドセールス業務の課題(複数回答)として「複数リードへの同時対応が難しい」が31.8%で最多でした。
※当社調べ。インサイドセールス業務に携わる会社員1,027名へのインターネット調査(2026年1月実施)
「初期対応の遅れによる取りこぼしがある」が25.2%、「追客・ナーチャリングが属人化している」が13.7%で続きます。いずれも仕組みでの補完が欠かせない課題です。
買い手の情報収集力が上がって営業は難化し、営業責任者の負荷は年々増しています。個人の長時間稼働や上司の経験に依存する運用は、労務やコンプライアンスの面から続けにくくなっています。結果として、マネージャーは目標達成と部下育成の板挟みで疲弊しがちです。
営業組織の作り方5ステップ
営業組織は、次の5ステップで設計します。
- 目的とKGI/KPIの設計
- 役割分担と体制の設計
- 営業プロセスの型化
- マネジメント・育成の仕組みづくり
- ツール・AIの定着
ここで扱うのは組織そのものの設計です。ステップ③で触れる営業の原理原則5ステップは、個々の商談を進める型を指します。組織の設計とは、対象とするレイヤーが異なります。
組織づくりの進め方として参考になるのが、サッカー日本代表の森保一監督のチームづくりです。森保監督は2期目の就任にあたり、指導はコーチ陣に委ねて自身は方針の提示に専念する、マネジメント型の体制へ移行しました。営業組織でも同様に、マネージャーが方針を示し、役割を分けて現場が自走する仕組みをつくることが、成果の再現につながります。
参考記事:日本代表を変えた「ボトムアップ」マネジメント──森保監督が語った組織づくりの極意|Business Insider Japan
ステップ① 目的・KGI/KPIを設計する
最初に、組織のゴールをKGIとして定めます。達成したい事業成果をKGIに置き、そこからKPIへ分解します。KPIは商談数、受注率、活動量など、行動レベルの指標まで落とし込みます。
行動レベルまで分解すると、ゴールと日々の活動が結びつきます。後の可視化と改善の起点にもなります。立ち上げ期でも、過去の受注案件や仮説検証で得た成功要因を手がかりに着手できます。
関連記事:インサイドセールスのKPIとは?種類・設定方法・計算式と改善のポイント
ステップ② 役割分担と体制を設計する
商談プロセスを工程ごとに分け、各領域に専任を置きます。代表例がTHE MODEL型で、マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスに役割を分けます。ただし、すべての企業に必要な正解ではありません。
少人数の組織では、はじめは一人が複数の役割を兼務します。規模の拡大に合わせて段階的に分ければ十分です。あわせて、誰が何を担当するか、どの条件で次工程へ引き渡すかを明確にします。基準が曖昧だと、案件が担当者の間で止まり、取りこぼしにつながります。
森保監督がコーチ陣に指導を委ねたように、マネージャーがすべてを抱えず、領域ごとに任せる体制が再現性を高めます。
ステップ③ 営業プロセスを型化する
成果を出す動きを型として共有し、属人化を防ぎます。各工程で確認する事項、次工程へ進む条件、記録すべき情報を定めるのが型化です。これで経験の浅いメンバーも、一定の水準で商談を進められます。
具体例が営業の原理原則5ステップです。事前準備、アプローチ、ヒアリング、提案、クロージングの5工程で商談を組み立てます。工程ごとに基準を言語化しておくと、判断のばらつきが減ります。
ステップ④ マネジメント・育成の仕組みを作る
育成は勘に頼らず、型とデータで標準化します。1on1、ロープレ、同行について、頻度、評価の観点、フィードバックの方法をそろえます。指導者ごとに内容が変わる状態を避けるためです。
数値からは、つまずいている工程を特定できます。そのうえで育成テーマを決め、改善のサイクルを回します。育成を仕組みに任せることが、マネージャーの負担を抑えながら質を保つ近道です。
ステップ⑤ ツール・AIを定着させる
SFAやAIは、導入して終わりにせず日常業務に組み込みます。定着とは、現場が使い続け、蓄積したデータが意思決定に活かされる状態です。入力ルール、データを確認する会議、数値を使った改善までを運用として設計します。ここまで整えて、投資が回収されます。
関連記事:SFAはAIでもっと組織に浸透する。AI前提の顧客データ管理の最適解
営業組織を定着させる3つのポイント
営業組織は、定着してはじめて成果を生み続けます。定着を支えるポイントは次の3つで、いずれもマネージャーの負荷軽減につながります。
- 活動量と数値の可視化
- 現場主導の改善サイクル
- AIによる商談内容の把握
特に重要なのが可視化です。活動量や数値は、Sales MXのようなダッシュボードで常に見える状態にします。商談の中身を会話から可視化するのは、音声解析AIのMiimosの役割です。
数値と会話の両面がそろうことで、マネージャーは全商談に同席せずに、質の高いフィードバックができるようになります。担当者自身も数値を振り返れるため、マネージャーが逐一介入しなくても改善が回ります。
ただし、定着のボトルネックは可視化のやり方だけではありません。
当社の調べでは、AIツールの導入後にとても成果が出ている企業の9割超が、活用状況を把握できていました。内訳は「よくできている」が71.6%、「ややできている」が25.8%です。
※当社調べ。営業におけるAIツールを導入している企業の営業マネジメント層・経営者層・DX推進責任者1,025名へのインターネット調査(2026年1月実施)
一方で、あまり成果が出ていない企業では、64.2%が活用状況をあまり把握できていません。成果が限定的だった企業には、組織推進で不十分だった対応も聞いています(複数回答)。最多は「AIツール活用に関する方針や優先度の明確な設定」の38.6%でした。
活用が思うように進まなかった要因(複数回答)でも、「教育・研修が不十分だった」が32.5%で最多です。可視化に加えて、方針設定と教育設計まで整えることが定着の条件になります。
※当社調べ。営業におけるAIツールを導入している企業の営業マネジメント層・経営者層・DX推進責任者1,025名へのインターネット調査(2026年1月実施)
関連記事:営業のAI活用とは?できること・導入5ステップ・失敗しないコツを解説
事例付き|事業フェーズ別・営業組織の作り方
最適な営業組織の形は、事業フェーズによって変わります。各フェーズでよくある課題と対策は下記の表のとおりです。そのうえで、当社が支援した企業の取り組みを紹介します。
| フェーズ | よくある課題 | 対策 |
|---|---|---|
| 0→1フェーズ | 勝ちパターンが定まらず、成果が安定しない | 戦略を構築し、テストマーケティングで成功モデルを型にして横展開する |
| 1→10フェーズ | 立ち上げた型が個々に閉じ、横展開できない | 既存組織を変革し、型を横展開しながらKPIを改善する |
| 10→100フェーズ | 組織拡大にマネジメントの標準化が追いつかない | 複数チームのKPI管理・マネージャー育成・部門間連携の標準化を進める |
関連記事:新規開拓営業の方法とは|3種類の手法と成果を出す進め方5ステップ
0→1フェーズ|営業の型を作り立ち上げる
0→1フェーズでは、勝ちパターンが定まらず、成果が安定しない状態を抜け出すことが重要です。そのため、下記のポイントに注目します。
- 優先施策:戦略を構築し、テストマーケティングで成功モデルを型にして対象市場や担当者へ横展開する
- 見るべき指標:アポイント獲得数と、型の再現状況
実際、当社が支援した酒類卸問屋は、テストマーケティングで成功モデルを型にして横展開する取り組みで、5ヶ月で営業組織を確立し全国へ拡大しました。同じく人材サービス企業は、手紙と架電を組み合わせる取り組みで、2ヶ月で約50社のアポイントを獲得しました。
1→10フェーズ|組織を拡大し再現性を高める
1→10フェーズでは、立ち上げた型が個々に閉じ、横展開できない状態を解消することが重要です。そのため、下記のポイントに注目します。
- 優先施策:既存組織を変革し、型を横展開しながらKPIを改善する
- 見るべき指標:アポイント数、キーマンへの接触率、目標達成率
実際、当社が支援した施工管理アプリのSaaS企業は、型を横展開しながらKPIを改善する取り組みで、2ヶ月目にアポイント数を約4倍へ伸ばし、キーマンへの接触率を6%から17%へ改善しました。同じくクラウド録画のSaaS企業は、THE MODEL型の体制を整える取り組みで、月次の目標達成率が111%を超えました。
10→100フェーズ|マネジメントで成長を仕組み化する
10→100フェーズでは、組織が大きくなり、マネジメントの標準化が追いつかない状態への対応が重要です。そのため、下記のポイントに注目します。
- 優先施策:複数チームのKPI管理、マネージャー育成、部門間連携の標準化を進める
- 見るべき指標:チーム別KPIと、継続的な受注件数
実際、当社が支援したフードデリバリー企業は、複数チームのKPI管理とマネージャー育成、部門間連携の標準化を進める取り組みで、3名のインサイドセールス支援から23区の50名体制、さらに全国へと拡大しました。7年以上の伴走を通じて、初回注文の受注は最大で月1,500件に達しています。
強い営業組織を作り、使い続けるために
営業組織づくりは、3つの動きの繰り返しです。まず目標と役割を決めます。次に営業と育成を型化します。そして数値を見ながら運用を改善します。この循環が、個人依存から脱却する確実な道筋になります。
作って終わりではなく、運用と改善を続けられる設計が重要です。マネージャーの負担は、AIを日常業務に定着させることで軽減できます。当社は営業の原理原則5ステップと、可視化・商談解析の仕組みで各ステップを支援します。
営業組織づくりでよくある質問
営業組織はいつ作るべきですか?
属人化や成長の鈍化の兆しが見えたときが目安です。ただし立ち上げ期でも、うまくいった商談の勝ちパターンを言語化するところから着手できます。人数が少ないほど属人化のリスクは高く、早い着手が有効です。
営業組織と営業部門の違いは何ですか?
営業部門は、組織図上の箱を指します。営業組織は、型・可視化・マネジメントで成果を再現できる仕組みを指します。箱を用意するだけでなく、成果を生む仕組みを備えている点が違いです。
THE MODEL型は必須ですか?
必須ではありません。THE MODEL型は分業の一手法です。規模や商材に応じて、兼務や簡易的な分業でも代替できます。自社の商談プロセスに合わせて役割を分けます。
マネージャーの負担が大きく人が育ちません。改善策はありますか?
商談の記録・可視化と、フィードバック基準の統一が改善策です。全商談に同席しなくても、記録をもとに指導の質を保てます。音声解析の仕組みを使えば、確認とフィードバックを効率化できます。






