エンタープライズセールスとは?5つのプロセスと成功のポイント

エンタープライズセールスとは、大企業や大規模組織を対象に、複数の関係者と合意を積み上げ、大型案件の獲得を目指す営業です。1件あたりの取引金額が大きく、検討期間も長くなる傾向にあります。

この記事では、エンタープライズセールスの定義から進め方、成果につなげるポイントまでを解説します。

エンタープライズセールスとは

エンタープライズセールスとは、大規模組織や複雑な案件を対象に、複数の関係者と合意を形成しながら受注を目指す営業です。稟議や審査を経て検討が長期化し、既存システムとの整合や導入設計まで問われます。

エンタープライズセールスの対象になりやすい案件には、次の特徴があります。

  • 契約金額や取引規模が大きい
  • 意思決定者や関係部署が多い
  • 稟議、調達、セキュリティ、法務などの審査が入る
  • 既存システムとの連携や導入設計が必要になる

似た言葉にアカウント営業という言葉がありますが、違いは下記の表のとおりです。

観点 アカウント営業 エンタープライズセールス
位置づけ 特定企業を攻略する営業手法 大規模・複雑な案件に対応する進め方
対象 企業規模は問わない 大規模組織や複雑な案件
関係 広い概念 アカウント営業と重なる一部

中小企業向け営業とエンタープライズセールスの違い

エンタープライズセールスと中小企業向け営業は、関係者の数と検討の長さで進め方が変わります。主な違いは下記の表のとおりです。

比較項目 エンタープライズセールス 中小企業向け営業
案件の特徴 大規模・複雑で個社対応が要る 比較的シンプルで標準対応が効く
関係者・決裁構造 多層で部門をまたぐ 決裁者が少なく短い
商談期間 数か月から年単位 短期間で決まりやすい
提案内容 個社ごとに設計し導入まで含める 標準提案で対応できることが多い
重視する営業活動 アカウント戦略と関係構築 接点数の確保とスピード
受注後の支援 導入設計と定着支援 比較的軽い

中小企業でも、課題が複雑な商材では深い提案が必要です。規模ではなく案件の複雑さなどで進め方を選ぶ必要があります。

エンタープライズセールスが難しい理由

エンタープライズセールスが難しいのは、担当者との交渉だけでは案件が動かないからです。難しさは、大きく3つに分かれます。

  • 意思決定構造が複雑
  • 商談が長期化しやすい
  • 適切な関係者と接点をつくりにくい

特に壁になりやすいのが、意思決定構造の複雑さです。

組織や案件が大きくなるにつれて、現場や利用部門から部門責任者、経営層まで多くの関係者が関わります。誰が賛成し誰が反対するかを早めに見極め、関係値を構築するべき担当者を絞った上で信頼を獲得していく必要があります。

エンタープライズセールスの進め方|5つのプロセス

エンタープライズセールスは、アカウント攻略と長期商談を前提に5つのプロセスで進めます。各ステップで「何をするか」と「何ができた状態を目指すか」を意識します。

事前準備

初めに、ターゲット企業を顧客像や導入余地から絞り込み、経営方針や事業課題を調べて関係部署とキーマンを想定することが必要です。「誰に、どの課題を、どう提案するか」が固まった状態を目指します。

エンタープライズセールスを進める際は、ネットでの検索などを通して課題の仮説を立てます。その課題のオーナーになりうる決裁者を、早く特定することが重要です。決裁者を見極めておくことで、複数の担当者とのやり取りを防ぐことができ、提案の内容を受け入れてもらいやすくなります。

アプローチ

アポを取ること自体を目的にせず、相手にとって価値のある情報や事例を提案します。メール、電話、紹介、セミナーなどを、相手や状況に合わせて組み合わせることが必要です。

接点づくりの段階から顧客理解を深め、信頼を積み上げます。早い段階で信頼を得ておくことで後の提案で本音の課題を引き出しやすくなり、社内でも推薦を獲得しやすくなります。

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ヒアリング

顧客の導入目的、成功指標、予算、時期、競合を確認する必要があります。これらを押さえると、提案を顧客の判断基準に合わせられ、提案の後戻りを防ぐだけでなく、受注まで進めやすくなります。

そのため、誰がキーマンなのかをヒアリングの段階から探っていけるように、事前に立てた仮説を検証していく必要があります。賛成・慎重・中立の立場も把握し、案件の進め方を設計します。

提案

提案書を作成する際は、担当者によって担当している業務と重要視しているポイントが異なるため、関心に合わせることが必要です。

関係者 主な関心
現場 業務負荷や使いやすさ
経営層 投資対効果や経営課題への影響
情報システム 連携性・安全性・導入負荷
購買・法務 契約条件・コスト・リスク

機能説明に終始せず、経営課題から導入効果までを一貫して示します。ROIや導入スケジュール、リスク、定着支援まで含め、複数の関係者が社内で提案を通しやすい状態をつくります。

クロージング

エンタープライズセールスのクロージングでは特に、契約内容を詳細に決めるだけでなく、顧客が社内で提案を通せるようにサポートしていくことが重要です。必要であれば稟議資料、ROI試算、導入ロードマップ、セキュリティ回答などを用意します。キーマンが社内で説明できる状態を作るサポートをしていきます。こうしたサポートが稟議をスムーズに進めていくことにつながり、受注までの期間を縮めます。

契約後は、導入体制や費用などを確認し、次のアクションを担当者ごとに割り振って進めていくとよいでしょう。

成果を出すエンタープライズセールスのコツ

エンタープライズセールスで成果を出すには、ターゲット企業のキーマンに確実に接点をつくり、関係を継続することが軸になります。ここでは3つのコツを紹介します。

ABMで決裁者・キーマンを狙い撃つ上流設計

エンタープライズセールスを成功させられるかは、誰に、どの課題を、どう伝えるかを自社の強みから逆算して設計する戦略段階でほとんど決まります。当社の「おまかせABM」では、企業ごとの課題仮説を立て、その課題のオーナーとなる決裁者を特定し、刺さる訴求までを用意しています。

ここで狙う相手や訴求軸を外すと、後工程の打ち手が効きません。上流を的確に固めることが、担当者止まりではなく決裁者との再現性ある接点につながります。当社の調べでも、こうした戦略的アプローチを受けた決裁者の約8割が、通常の営業との違いを感じたと回答しています。

※当社調べ。ABMを意識した営業アプローチを受けた法人企業の経営者・決裁者1,012名へのインターネット調査(2026年2月実施)

手紙を活用したマルチチャネルアプローチ

決裁者の関心を引くには、記憶に残るような接点を作っていくことが必要です。手紙やCXOレター、同梱物、SNSなどを組み合わせ、単発では届かない相手に接点をつくります。自社に向けたものだと明確に伝わる内容ほど、返信やアポにつながります。

当社の調べでも、戦略的なアプローチを受けた決裁者が最も価値を感じた要素は「提案内容が自社専用だと明確にわかること」でした。

※当社調べ。ABMを意識した営業アプローチを受けた法人企業の経営者・決裁者1,012名へのインターネット調査(2026年2月実施)

テレアポで積極的なアプローチを行う

手紙で関心を持ってもらった相手には、電話で積極的に接点をつくります。受付や代表電話で止まらないよう、周辺の関係者から組織構造を把握し、会う理由を提案してキーマンとの接点を作っていきます。一度で決まらなくても、継続してコールする仕組みが成果を支えます。

エンタープライズセールスで活用するべきABMの考え方

エンタープライズセールスでは、優先度の高い企業を定め、営業とマーケティングを連携し、企業単位で接点やコンテンツを設計するABMの考え方が必要です。

ABMが向いているのは、1件あたりの単価が高い商材です。関係者が多く準備物も多いですが、一社一社に時間をかけやすく、顧客が本当に必要な情報を提供できるようになります。対象を広げると、企業ごとの準備物をテンプレート化しにくくなります。

当社のおまかせABMなら、対象企業の選定から決裁者の特定、記憶に残るアプローチ、改善までを一貫して担います。限られた対象に集中し、担当者止まりではなく決裁者との接点をつくれる点が強みです。

関連記事:営業組織におけるAI活用最前線。「組織的に」AIを実装する先進企業

エンタープライズセールス組織のつくり方

体制構築の種類は、内製、営業代行、伴走型支援の3つに分けられ、下記のような違いがあります。

体制 特徴 向いている状況
内製 知見は社内に残りやすい。採用・育成・立ち上げに時間がかかる 人材と時間の余裕がある
営業代行 実行量を確保しやすい。知見が社内に残りにくい場合がある 実行量を早く増やしたい
伴走型支援 戦略と実行を補いながら、社内への知見移転も進めやすい 戦略から実行まで補いたい

営業の実行量を増やすだけでは、非効率になりがちです。根拠の曖昧なリストに対して大量のアプローチをかけても、決裁者に届かず埋もれてしまいます。成果を分けるのは、どの企業の誰を狙うかという戦略設計です。エンタープライズセールスにはいくつかのポイントがあります。伴走型支援などの外部リソースを活用し、戦略設計の部分をサポートしてもらうことも有効です。

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ABMの導入事例

大手企業へのアプローチで成果につながった当社の支援事例を紹介します。

世界No.1クラスの経費精算SaaSの日本進出支援

世界No.1クラスの経費精算SaaSの日本進出案件において、約1年半で従業員1,000名を超える企業のCFOクラスへ、アポイントを200件創出しました。

この企業は当初、日本市場でCFOクラスの決裁者に接点をつくれていませんでした。経費精算の全社導入には財務部門の決裁が関わるため、CFOクラスとの合意が必要です。

そこで、投資対効果を経営目線で示す資料を用意し、秘書を経由して接点をつくりました。決裁者の関心に合わせた資料と、到達までの経路を設計したことが、成果につながっています。

業界トップのHRテック企業の超大手向け拡販

業界トップのHRテック企業の新サービス拡販を支援し、2ヶ月で1名あたり約600社へ手紙を送り、50社のアポイントを獲得しました。

この企業は、狙いを定めたエンタープライズ企業から短期間で商談を増やしたい一方、社内のリソースが不足していました。既存のベンダーはキーマンを特定して何度も架電していましたが、それでもアポイントが取れない企業が多く残っていました。

そこで当社が、ABM戦略でキーマンを特定し、部署ごとに響く切り口で手紙の内容を設計して、架電と組み合わせます。反応を見ながらHR以外の部署にもターゲットを広げ、既存ベンダーが取れなかった企業からも、続々とアポイントが生まれています。

エンタープライズセールスを成果につなげるために

エンタープライズセールスは、複数の関係者との合意形成を前提に進める営業です。成果を出すには、アカウント戦略、意思決定構造の把握、個社ごとの提案を揃える必要があります。自社だけで体制を整えにくい場合は、外部の支援も選択肢になります。

当社のおまかせABMは、対象企業の選定から決裁者の特定、記憶に残るアプローチ、改善までを一貫して担います。運や営業センスに頼らず、会いにくい決裁者との接点を再現性のある形でつくります。エンタープライズ領域の新規開拓に課題を感じている場合は、お気軽にご相談ください。

当社は2010年の設立以来、600社以上の企業を支援し、取扱商材は2,000件を超えています。対応エリアは全国47都道府県です。

エンタープライズセールスに関するよくある質問

エンタープライズセールスとアカウント営業の違いは何ですか

アカウント営業は特定企業を単位に攻略する営業手法を指します。エンタープライズセールスは、そのうち大規模組織や複雑な案件に対応する進め方です。重なる部分は多いものの、同義語ではありません。

エンタープライズセールスに必要なスキルは何ですか

顧客の事業や業界を読む力、複数の関係者と関係を築く力、意思決定プロセスを整理する力を使います。経営層に投資対効果を示す提案力と、長期案件を管理する力も問われます。

商談期間はどのくらいですか

案件によりますが、数か月から年単位に及ぶことが多くなります。関係者や承認の段階が多いほど長引きます。期間の前提は早い段階で顧客と確認します。

重視すべきKPIは何ですか

受注件数だけでなく、進捗を段階で測る指標を組み合わせます。対象アカウント数、キーマンとの接点数、各段階の通過率、案件金額などを追います。

失注を防ぐために押さえるべきことは何ですか

担当変更や予算見直し、稟議の停滞などで案件は止まります。単一の担当者に依存せず、複数の関係者と接点を保ち、進捗を継続して管理します。